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この記事では、バレエの代表的な作品をバレエの歴史に沿って紹介をしていきます。
こちらのバレエの歴史についての記事も併せてご覧ください。
1.ロマンティック・バレエとは、
ロマンティック・バレエは、19世紀のヨーロッパの社会情勢と深く結びついて誕生しました。
- 産業革命と社会不安: 産業革命による都市化の進展や貧富の格差拡大など、社会不安が高まりました。人々は現実の厳しさから逃避し、夢や幻想の世界に憧れるようになりました。
- ロマン主義文学・美術の影響: 文学や美術の世界でロマン主義が隆盛し、感情、個性、想像力、神秘主義などが重視されるようになりました。バレエもこれらの影響を受け、ロマンティックなテーマや表現を取り入れるようになりました。
時代背景から、衣裳デザインや踊りのテクニックなど、様々な観点で見ていきます。
バレエの起源を再確認!
まずは、バレエの起源から少し整理していきましょう
- バレエは、ルネサンス期のイタリアで生まれ、フランスで発展しました。当初は、宮廷の娯楽として、歌や台詞を伴うものでした。
- 17世紀には、フランスのルイ14世が王立舞踊アカデミー(現在のパリ・オペラ座バレエ団)を設立し、バレエの基礎が確立されました。
- 19世紀後半には、ロシアで発展し、壮大で技巧的な作品が数多く生まれました。
2.ロマンティック・バレエの特徴となるスタイル
ロマンティック・バレエは、19世紀前半にヨーロッパで隆盛したバレエのスタイルです。
産業革命後の社会不安や現実逃避の願望を背景に、現実世界とは異なる幻想的な世界や、人間の内面的な感情を描くことに重点が置かれました。
- 代 表 作:「ラ・シルフィード」「ジゼル」「コッペリア」など
- 衣 裳:白いロマンティック・チュチュ
- テクニック:ポワントの多様、浮遊感・軽やかさの追求
さらに詳しく、特徴を見ていきましょう!
作品のテーマ
- 幻想的な世界: 妖精、精霊、幽霊など、現実には存在しない超自然的な存在が物語の中心となることが多いです。
- 異世界への憧憬: 現実世界からの逃避願望を反映し、異国や夢の世界、死後の世界などが舞台となります。
- 報われない愛: 人間の世界と妖精の世界など、異なる世界の住人との間で起こる悲恋がよく描かれます。
- 自然への賛美: 都会生活とは対照的な、神秘的で美しい自然の風景が舞台設定に取り入れられます。
- 内面的な感情: 登場人物の心理描写が重視され、愛、憧れ、絶望、孤独といった感情が深く掘り下げられます。
衣裳デザイン
女性ダンサーは、ロマンティック・チュチュと呼ばれる、膝下丈のチュールスカートを着用するのが特徴です。
白いチュチュにより、作品のテーマとして多く登場する妖精の純粋さや儚さを表現しています。
宮廷の娯楽という歴史から変化し、衣装も動きやすさを重視したダンサーの軽やかさや浮遊感を強調するデザインとなっています。
テクニックでの表現
トゥシューズでつま先立ちで踊るポアントの技術が発展し、妖精のような非現実的な存在を表現するために多用されました。
観客に向かって正面向きに見せる表現から、肩や上半身を斜めに見せる【エポールマン】という動きが多用され、優雅さや繊細さを表現しました。
ジャンプや足運びなど、全体的に重力を感じさせない、浮遊感や軽やかさを追求した動きが特徴です。
音楽
感情的な旋律や、夢幻的な雰囲気を醸し出す音楽が用いられました。また、オーケストラが大規模化し、音楽表現の幅が広がりました。
主な作曲家
- ジャン・マドレーヌ・シュナイツホーファ 『ラ・シルフィード』など
- クレマン・フィリベール・レオ・ドリーブ 『コッペリア』など
- アドルフ・アダン 『ジゼル』『海賊』など
3.ロマンティック・バレエの代表的な作品3選
ロマンティック・バレエの時代に、女性ダンサーが主役として舞台の中心に立つようになりました。
中でも、マリー・タリオーニやカルロッタ・グリジなど、優れた女性ダンサーが登場し、ロマンティック・バレエの発展を牽引しました。
『ラ・シルフィード』 (仏:La Sylphide、初演1832年)
パリオペラ座からロマンティック・バレエの幕開けを告げた作品。
妖精の世界に憧れる青年の悲恋を描いています。
振付は、フィリッポ・タリオーニが、娘のマリー・タリオーニのために創作したとされています。
現在では、タリオーニ版の振付は継承されておらず、
- タリオーニ版を観たオーギュスト・ブルノンヴィルが、デンマーク国立バレエ団により上演した「ブルノンヴィル版」初演1836年
- パリオペラ座に残されていた版画などの資料を基にピエール・ラコットが可能な限り復元をした「ラコット版」初演1972年
- 「ヴィクトル・グゾフスキー版」初演1946年
など様々なバージョンがあります。
似たようなタイトルに『レ・シルフィード』(仏:Les Sylphides、初演1907年)がありますが、シルフィードが登場する以外の共通点がない、異なる作品です。
『ジゼル』 (仏:Giselle、初演1841年)
農村の娘ジゼルと貴族アルブレヒトの悲恋を描いた傑作。
全二幕から構成される『ジゼル』は、ロマンティック・バレエの象徴となっており、世界中のバレエ団で上演されています。
1841年にパリオペラ座にて初演された『ジゼル』は、1849年に初演メンバーであったカルロッタ・グリジの引退によりレパートリーから外れ、1868年まで上演をしていました。
その後、ロシアで継承されていき、マリウス・プティパの手によって、第一幕のジゼルとアルブレヒトのパドドゥが削除され、レオン・ミンクスが作曲したジゼルのヴァリエーションが挿入などの改定をされた「プティパ版」が有名となっています。
近年では、物語の設定を大きく変更し、現代的に再解釈した演出も発表されてるので今もなお、注目のバレエ作品となっています。
『コッペリア』(仏:Coppélia、初演1870年)
前に挙げた2作品と比べると、少し後の作品ですが、ロマンティック・バレエの要素を受け継いでいます。
主役である村娘のスワニルダと村の青年であるフランツが、博士のコッペリウスが造った人形のコッペリアをめぐってドタバタ劇をみせるコミカルな物語です。
パリオペラ座で初演をした『コッペリア』は、1958年の改訂をするまで男装をした女性ダンサーが演じていたとされています。初演では、美人バレリーナとして有名だったウジェニー・フィオクルが男装をしてフランツ役を演じました。
4.ロマンティック・バレエの発展に貢献した人物
マリー・タリオーニ
卓越した技巧と優雅さで観客を魅了した、ロマンティック・バレエを代表する伝説的なバレリーナ。『ラ・シルフィード』の初演で主演を務めました。
カルロッタ・グリジ
『ジゼル』の初代ジゼル役を務めたバレリーナ。演技力と表現力に優れ、ジゼルを演じる上で重要な役割を果たしました。
ジュール・ペロー
優れた振付家であり、『ジゼル』や『ラ・シルフィード』など、数々のロマンティック・バレエの名作を振り付けました。
ジャン・コラリ
ジュール・ペローとともに『ジゼル』を共同振付けした振付家です。
5. 【まとめ】ロマンティック・バレエが後世に与えた影響
ロマンティック・バレエは、バレエの歴史において重要な転換期であり、その後のバレエの発展に大きな影響を与えた、非常に魅力的な時代となりました。
クラシックバレエへの継承
ロマンティック・バレエの様式やテクニックは、後のクラシック・バレエに受け継がれ、発展していきました。例えば、『白鳥の湖』や『眠れる森の美女』といったクラシック・バレエの名作にも、ロマンティック・バレエの影響が見られます。
現代バレエへの影響
コンテンポラリー・バレエなど、現代のバレエにおいても、ロマンティック・バレエのテーマや表現手法は、形を変えながらも受け継がれています。
バレエの普遍的なイメージの形成
白いチュチュやポアントなど、ロマンティック・バレエが生み出したスタイルは、バレエの普遍的なイメージとして現代に至るまで定着しています。